最近、トヨタ自動車はEVや自動運転などに関する他社との提携を相次いで発表し、「攻めの姿勢」を見せている。これまでのトヨタは、EV戦略には慎重な構えを見せていた。このため「トヨタは姿勢を転換した」という報道も増えている。本当にトヨタは姿勢転換したのだろうか。(ジャーナリスト 井元康一郎)
EVや自動運転に関する相次ぐ提携
「攻めの姿勢」を示すトヨタ
電動車両年間100万台計画、EVや自動運転を巡る他社との積極提携など、このところ「攻めの姿勢」を示す発表を立て続けに行っているトヨタ自動車。グループの年間生産台数が1000万台超という巨大メーカーの“姿勢転換とも受け取れることから、メディアに取り上げられる機会も格段に増えた。
「EV」「自動運転」「クルマのインターネット接続」は今、世界の自動車開発において3大ブームとなっている。
だが、トヨタはつい最近までバッテリー駆動式のEVや自動運転に関しては表向き冷ややかな態度を示してきた。そのことが新技術に対して消極的と受け取られ、しばしば「トヨタは出遅れている」というレッテルを貼られた。
2017年にトヨタが矢継ぎ早に打った策は、明らかに“3分野”の開発トレンドをキャッチアップしようとするもののように見える。自動運転技術の世界的プレーヤーであるアメリカのエヌビディアはじめ多数のIT企業との提携、リチウムイオン電池に代わる次世代品として期待されているソリッドステート(固体電解質)電池開発のロードマップ公表、そしてマツダ、スバルなどとの電気自動車開発での協業等々。
これらの発表はトヨタの“出遅れ”懸念をある程度払拭するのには十分であったろう。もっとも、ここで疑問が起こる。トヨタはEVや自動運転に関して方針転換したのかどうかだ。
ここ10年ほどのトヨタの動向に関する取材実感から言うと、トヨタは別に、今までのストラテジーを大きく変えたわけではなく、またEVや自動運転に「急激に切り替わっていく」とする“希望的観測”に迎合もしていない。
それを具体的に検証してみよう。