年に2、3回しか飛行機に乗らない経営幹部はエコノミークラスを利用し、出張の多い営業担当者やエンジニアはファーストクラスやビジネスクラスを使う――こんな社内規定を想像してほしい。一部の企業はこうした方向に動き始めている。出張による消耗が従業員の生産性を押し下げ、ひいては士気の低下や離職につながることを防ぐ狙いだ。これは昔からある問題だが、状況は悪化している。エコノミー席はますます窮屈になっているうえ、出張の多い会社員は増える一方の作業をこなすため、睡眠や家庭生活や仕事の満足度を犠牲にせざるを得ない。優秀な人材の需要が高い多くの業界では、出張による消耗を減らすことは長い目で見れば節約になり得る。従業員に辞められて後任を採用したり育てたりする費用のほうがずっと高くつく可能性もあるからだ。出張規定は人材獲得に影響する要素になった。今では求職者が報酬や医療保険や退職金制度と並んで出張規定を知りたがるケースも多い。