満州事変の背景に迫る『日本の選択8 満州事変 世界の孤児へ』
NHK取材班編
(角川書店/1995年)

 本書は、1986年からNHK特集で放送された「ドキュメント昭和」を書籍化したもので、95年に改訂・改題した文庫シリーズの一冊だ。

「大戦の惨禍から生まれた国際連盟、しかし連盟が維持できた平和はわずか二十年足らずであった」という一文に、当時の国際政治の難しさが集約される。

 昭和の初期。世界の平和を乱す存在として国際連盟で“世界の孤児”になることを選択した日本の姿を扱う。満州事変、リットン調査団、連盟からの脱退などに焦点を当て、中国代表の顧維鈞(1888~1985年)など数多くの関係者に取材し、新資料にも当たる。第1次世界大戦後のベルサイユ体制から離脱する日本の選択をダイナミックに描く。映像だけではない文章力にも驚かされる。

(元アラビア石油取締役、オイル・アナリスト 庄司太郎)