築地市場解体と同時に始まる「環二通り」のトンネル工事。開通を待って2022年に開業予定なのが、バスを利用した交通システム「BRT」である。過疎地の鉄道代替手段として取り上げられがちなBRTだが、実は都市部における、費用対効果の高い新たな交通機関として注目されている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

将来の大混雑緩和のために
臨海エリアに導入される「BRT」とは?

リオ五輪の観客移動でもBRTは大活躍した地下鉄や、ゆりかもめのような新交通システムに比べると、輸送力や速度では劣るが、路線バスのように遅れることはなく、整備費は格安でコスパに優れているのがBRTの特徴だ(写真はリオ五輪で導入されたBRT) Photo:REUTERS/AFLO

 築地市場は今月6日正午を以て83年の長い歴史に幕を下ろし、10月11日から豊洲新市場が開場した。同日から築地市場の解体工事が始まっており、完了次第、東京都市計画道路環状第2号線、通称「環二通り」のトンネル工事に着手。完成は2022年度を予定している。

 このトンネルの開通により、2014年に開通した虎ノ門~新橋間と、築地から先の勝どき、晴海、豊洲新市場、有明までが一直線に結ばれることになる。

 大規模マンション開発が進む臨海エリアでは、かねてより鉄道の輸送力不足が指摘されていた。都営大江戸線勝どき駅では建設時の想定をはるかに上回る利用者で毎朝大混雑となり、出入口やホームを増設する大規模改良工事が進められている。

 臨海部の開発は加速する。晴海に建設中の2020年東京オリンピック選手村は大会終了後に住宅地に転用される予定で、将来的には地域全体で10万人以上の人口増加が見込まれている。このままでは、鉄道やバスの混雑はさらに激化し、機能不全に陥りかねないのだ。これを回避すべく誕生するのが、都心と臨海副都心を直結する新たな公共交通機関「BRT」である。

 BRTとは、バス・ラピッド・トランジット(Bus Rapid Transit)の略で、日本語では「バス高速輸送システム」と呼ばれることもあるが、まだなじみの薄い名称かもしれない。さらに話をややこしくしているのは、日本ではBRTという用語が、2つの使われ方をしている点にある。

 先行したのはJR東日本が運行するBRTで、東日本大震災で津波被害を受けたJR気仙沼線と大船渡線の線路をバス専用道に改築して復旧したものだ。JR北海道やJR九州も被災したローカル線のバス転換を検討中で、これを「BRT化」と表現することも多い。いわば「地方型BRT」と言ったところだろうか。

 これに対して本来の意味に近いのが「都市型BRT」。新潟市や岐阜市、町田市(東京都)、藤沢市(神奈川県)などが運行する、基幹バスサービスである。これらの路線では、車体が2台つながった「連節バス」が使用されていることが多い。

 連節バスが走っている路線がBRTという誤解も一部に見受けられるが、そもそもBRTの定義とは何だろうか?
 
 国土交通省はBRTを「連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム」と定義しているが、これだけでは何のことかさっぱり分からないので、BRTとはどのような乗り物なのか、普通のバスとは何が異なるのかを見ていきたい。