「8つの流派」を知らずして、マーケティング業界を語るべからず! マーケティング職としてステップアップしていく道筋とそのポイントをまとめた新刊『マーケティングの仕事と年収のリアル』から、マーケティング職の方はもちろん、より広い職種の方にも通じるテーマや関連する対談をお送りする本連載。本日から2回にわたり、仕事のスタイルや判断基準が異なるマーケティング業界の「8つの流派」を紹介します。流派のクセを知れば、上司や交渉先とのコミュニケーションに活かせるうえ、自分と会社の相性も見極められます。さて、あなたやあなたの上司はどの流派?(イラスト:ひらのんさ)
マーケティングの4P施策(「Product(製品)」「Promotion(購買喚起)」「Place(販売チャネル)」「Price(価格)」)は、事業会社の中で、多様な部門が連携して成り立っています。また、それぞれの業務に対して、外部から専門的な機能でサポートする支援会社が存在します。どの部門の業務までがマーケティングの範疇かという意識は、会社によって千差万別です。
こうしたマーケティング業界の構造があるとして、同じ業態なら、どの会社でも同じアプローチと組織文化なのでしょうか?
すでに業界で働く人なら実感していると思いますが、仕事のやり方や判断のスタイルは、会社の文化やチームの責任者によって大きく異なるものです。同じ武道でも強者それぞれに流派ができ独自の進化を遂げたように、マーケティングの仕事でも「流派」のようなものが存在します。自分がどの流派をめざすのかで最適な会社は異なりますし、自分が仕事で関わる人々がどのような流派かを見極めておくと、相手の言動が理解できずにストレスを感じることも減ります。
本日から2回にわたって、私の独断と偏見で整理した、マーケティング職の「8つの流派」について解説していきます。伝わりやすくするため誇張して描写しますが、マーケティング業界内やご自分の周囲で思い当たる人がいるのではないでしょうか?
これらの流派は、どれが正しい・正しくない、どれが良い・悪いというものではない、と私は捉えています。あえて言えば、成果さえ出せるならば、どれも正しい。マーケティングの仕事で、うまく他人と協働する、上司やクライアントの意思決定を引き出すには、相手の流派を見極め、相手が理解しやすく、受け入れやすいコミュニケーションをすることは大変重要です。
マーケティング業界に存在する8つの流派
【流派1】とにかくエッジなブランディング派
口癖「センスいいブランドに見える?」
■価値判断:世界初や日本初、文化度の高い取り組みを重視し、マス化したセンスを嫌う傾向。
■個人特性:センスにこだわる人が多く、オシャレな服装や、業界で影響力をもつインフルエンサーたちとの関係性を大切にする人が多い。
■他流派からの評価:「尖った施策で気取るのはいいけど、売上につながってるの?」「マス化したものをバカにしてる?」「人のセンスや交友関係で品定めしてない?」と批判的な目を向けられがち。
■生息地:先端なブランド、プレミアムなブランドであることを重視されることが多い高級ブランド領域のマーケティングに関わる人に多い。
【流派2】面白アイデア企画派
口癖「なんか、面白いアイデアないの?」
■価値判断:コンセプトや表現の斬新さ、自分が心から面白いと思えることを重視し、よく見かけるありきたりな施策を嫌う傾向。
■個人特性:自己表現やアイデアにあふれた楽しい時間を過ごすことにこだわる。服装や発言もユニークで、周囲を楽しませるサービス精神旺盛な人も。
■他流派からの評価:「ターゲット顧客と自分は違う層なのに、自分の感性が納得しないと前に進めない」「思いつきアイデアで介入してくる」「人のことを面白い/面白くないで評価する」と思われがち。
■生息地:競争相手が多くコモディティ化した商材に関わる人に多い。
【流派3】コンバージョン売上派
口癖「結局は売上コンバージョンにつながったの?」
■価値判断:それぞれの施策が顧客の購買につながった率(コンバージョン)を重視し、イメージアップにしか貢献せずROI(費用対効果)が見えにくいブランディング施策投資を嫌う傾向。
■個人特性:お金の勘定が得意で、関わる事業が儲かることにこだわる人が多い。上っ面ではない人の下世話な本音=インサイト理解に長けた人も。
■他流派からの評価:「コンバージョン求めて煽りが下品でブランド価値を損なってる」「マーケティング施策を経済的価値だけで評価して切り捨てる」などと思われがち。
■生息地:ダイレクトマーケティングに関わる人に多い。
【流派4】データ検証PDCAサイクル派
口癖「それはデータで検証されてるの?」
■価値判断:PDCAサイクルを重視し、検証結果にもとづかない施策の乱れ打ちを嫌う傾向。
■個人特性:事実や数字に基づく理解に長けていて、地道な努力ができるまじめな人も。
■他流派からの評価:「改善の積み重ねにはいいが、イノベーティブなアプローチがやりにくい」「細かい数値を求められるのが面倒」などと、距離を置かれがち。
■生息地:データ取得コストが低く、分析が好きな調査業界やその出身者に多い。
以上は、8つの流派のうちの4つ。いかがでしたか。続きはまた明日お届けします!