破産法申請した
米小売り大手シアーズの経営破綻
10月15日、米小売り大手のシアーズ・ホールディングスが米連邦破産法11条(通称チャプターイレブン、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。
著名経営学者のドラッカーが「全米で最も成功した企業の一つ」と称賛するほど、同社は19世紀後半から20世紀中盤に米小売業界の王者であった。そのシアーズが破綻に追い込まれた。
驚きとともに時代の変遷を感じざるを得ない。
同社は“シアーズ・ローバック”の商標で知られていた。シアーズ・ローバックは、19世紀後半から20世紀の中盤にかけて、経営改革=イノベーションによって成功を手にした。新しい市場を自ら開拓し、その需要を取り込むために新しい商品や組織、生産プロセスの整備を行った。重要だったことは、当時の同社は環境の変化に適応し、必要な改革を進めたことだ。
ところが、1980年代以降、シアーズは経済環境の変化に適応することができなかった。特に大きかったのが、IT先端技術の普及だ。消費者は同社の店舗で買い物を行うよりも、アマゾンのEC(電子商取引)プラットフォームでの消費を選んだ。その方が便利だからだ。
それに加え、経営者の問題も見逃せない。特にファンド出身の経営トップには、変化を感じる“センス(感覚)”が欠如していた。かつて栄華を極めたシアーズの経営破綻は、イノベーションの重要性と経営者に求められる根源的な資質を考える格好のケーススタディの一つと言ってもよいかもしれない。