INSEAD教授、同校ブルー・オーシャン戦略研究所(IBOSOI)共同ディレクター。世界経済フォーラムのフェローを務めるほか、ブルー・オーシャン・グローバル・ネットワークの設立者でもある。欧米・アジア太平洋地域の数々の多国籍企業において、取締役や顧問を歴任。経営思想界のアカデミー賞と言われる「The Thinkers 50」で、世界のマネジメントの大家トップ3に名を連ねる。2005年に発表したレネ・モボルニュ氏との共著『ブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する』が世界的ベストセラーに
2005年の発売以降、世界44ヵ国語に翻訳され、累計360万部超を売り上げるというムーブメントを起こした経営戦略書『ブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する』。その刊行から10年以上を経て、続編『ブルー・オーシャン・シフト』(ダイヤモンド社)が発売され、話題を呼んでいる。これは、前著の刊行後、共同著者であるW・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏の2人が世界中のブルー・オーシャン・プロジェクトの成功と失敗を比較・分析し、ブルー・オーシャンを創造するための具体的な手順と体系的なプロセスをまとめたものだ。あまりにも有名になったため、様々な解釈がなされるようになったブルー・オーシャン戦略の真の教訓とは何か。そして、日本企業がこれから目指すべきブルー・オーシャンはどこなのか。来日したW・チャン・キム氏に、同戦略の神髄を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 鈴木崇久・竹田幸平、ダイヤモンド・オンライン編集部 小尾拓也、撮影/住友一俊)
既存市場の破壊かニッチ戦略か
ブルー・オーシャンにまつわる誤解
――「ブルー・オーシャン戦略」という言葉が世界中で広く知れ渡った結果、言葉がひとり歩きして本来の意味をきちんと理解しないままこの言葉を使ったり、反論したりする人も多いのではないかと思います。これまでの自身のご経験から、よくある誤用や誤解を踏まえながら、「ブルー・オーシャン戦略」の本来の意味を改めてご説明いただけないでしょうか。
ブルー・オーシャン戦略については、「他と違う戦い方がブルー・オーシャンなのか」「それともニッチ戦略なのか」「あるいは既存市場を破壊することなのか」といった誤解が、ずっとありました。
欧米には以前から、市場でポジションを得るためには、競争戦略として差別化か低コスト化のどちらかでやっていくしかない、という思い込みがあった。差別化と低コスト化は両立できないと考えられていたのです。