アジアといってもタイ、マレーシア、インドネシアといった、GDPレベルでは日本よりも低い東南アジアの国々が、日本よりも大きな放映権料を投資している事実がある。それだけ東南アジアにおいてプレミアリーグの価値は高く、サッカーコンテンツに大金を投資する土壌があると言える。

 毎年のように巨額のアジアマネーが欧州サッカー界に流出しており、その資金をもとに多くのスター選手が欧州に集中する。こうして実質欧州一極集中の構図ができ上がりつつある。

 本来アジアマネーはアジアサッカーの為に使われるべきであり、欧州リーグに資金が流れる構図を変えないかぎり、アジアサッカー界の劇的な発展はないと考えている。もっと言ってしまえば、この巨額のアジア放映権マネーの一部でもJリーグに持ってくることができれば、リーグの新たな成長ドライバーになると筆者は確信している。

2012年に本格化したアジア戦略
「Jリーグをアジアのプレミアリーグに」

 そのような背景の中で、Jリーグも海外市場、特にアジアへ打って出る必然性を感じ、2012年にJリーグの関連会社である株式会社Jリーグメディアプロモーションの中に「アジア戦略室」というプロジェクトチームが結成された。筆者は、チーム結成のオープニングメンバーとして加わったが、当時はゼロからのスタートで何が正解なのかも分からないままに奮闘していたことを覚えている。

 当初、チームメンバー(といっても3、4人)の中で共通で想い描いていたゴールが『Jリーグをアジアのプレミアリーグに』ということである。『Premier』という英単語は、『最高の』とか『最上位の』と訳されることが多いが、とにかくJリーグにアジア中のスター選手が集まり、その試合をアジア中のファンが観戦している状態を作り出そうという発想だ。その中でも経済成長も著しく、日本との関係も友好であり、何よりサッカー人気が圧倒的に高い東南アジアを最初のターゲットに置いた。

前例のない挑戦、東南アジア選手のJリーグ加入

 最初は非常に苦労した。なにしろ東南アジアのスター選手を連れてくるにせよ、これまでJクラブが東南アジアの選手を獲得した実績はなく、むしろ東南アジアは日本よりもサッカーのレベルが高いとは言えないので、選手の市場として注目もされていなかった。限られた予算で最強チームを作ることが責務となるチームの強化・編成責任者の立場に立てば、東南アジア選手の獲得はかなりのチャレンジだ。