日本政府は、「米国の施政権下に置かれた地域に尖閣諸島が含まれている事実に対して、中国側は何ら異議を唱えていない」「1920年に中華民国駐長崎領事から福建省の漁民が尖閣諸島に遭難した件について発出された感謝状に、『日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島』と記載されている」などの理由から、中国側の主張に正当性はないことを訴えているが、歩み寄りは一向に進まない。

 今や世界2位の経済大国となった中国は、日本にとってかけがえのないビジネス・パートナーだ。中国と取引きのある某コンテンツ会社の男性社長は、「尖閣購入は評価できる部分はあるが、問題を広げないで欲しいというのが本音」と明かす。

 彼が指摘するとおり、日中関係は政治とビジネスの間で利害のバランスをとることが難しい。北方領土問題を抱えるロシア、竹島問題を抱える韓国との関係と同様に、日本にとって尖閣問題は大きなジレンマとなってきた。

大量の寄付金が物語る潮目の変化
国民が持ち始めた「大局的な目」

 とはいえ、賛否はともかく、東京都が国に先んじて尖閣の取得に乗り出した意義は大きい。島を買い取ったところで、領土問題の根本的な解決には繋がらないが、中国に対して「日本の固有の領土」であることを強く主張できる材料ができ、日本政府の弱腰外交に対してもプレッシャーを与えることができる。

 藤村修官房長官も国による購入は否定していないが、政府はこれを機に、尖閣領有権問題を国民的な議論の俎上に乗せてはどうか。外交上センシティブな問題であることはわかるものの、中国との関係を発展させたいなら、いずれは避けて通れない課題である。

 北京大学研究員で国際コラムニストの加藤嘉一氏は、ダイヤモンド・オンラインの連載で「中国政府はいま、ジレンマに陥っている。実は、これは日本にとってチャンスだ。まず、日本国民が自国の領土に対する意識を高め、この問題の由来や背景を能動的に考える契機としなければならない」と提言している。

 両国の未来を考えれば、それこそが「冷静かつ大局的な観点」だと思える。寄付金口座に集まる大量の資金は、まさに国民が国に先んじて大局的な目を持ち始めていることの左証ではないだろうか。