レビュー
「独裁者」という言葉から、どのような印象を受けるだろうか。民衆を虐げ、敵対するものがいれば躊躇なく排除し、恐怖で人々を支配する――そんな冷血で残虐な人間を思い浮かべるかもしれない。しかし本書『独裁者たちの人を動かす技術』の著者によれば、独裁者たちは人々を自発的に動かすために「まっとうなリーダーシップ」を発揮していたというのだ。
独裁者たちは民衆や臣下から熱烈な支持を集めるだけでなく、誤った方向へ舵を切っているときですら誰にも止められないほどの推進力を生み出す。彼らはいかにして生まれ、支持を得るのか。本書では、古今東西の独裁者たちの言動を詳述し、彼らの「人を動かす技術」を暴いていく。
もちろん、独裁者たちの行った虐殺や暴力支配を肯定することはできない。しかし、自分の思うように事を運ぶために彼らが採った緻密な戦略の数々は驚きに値する。本書を読めば、人を従わせるために必要なのは恐怖だけではないということがよくわかるだろう。著者が「人間の魅力は日々の言動の積み重ねだと気づかされた」と言うほど、独裁者たちが実現してきた熱狂の裏にはたゆまぬ努力があったのだ。