先週、世界各地で耳にした市場崩壊の音は、単なる調整局面などではなく、一つの時代の終わりを告げるものだ。冷戦後の国際関係は比較的安定した状態が長く続き、市場はこの間に独特な形で経済成長が促される環境を味わった。米国には競争相手がおらず、最も重要な諸大国はおおむね(ごく一部のときもあったかもしれないが)市場開放と投資・貿易の障壁軽減を重視する米政府の姿勢を支持した。世界の力学において、経済の非ゼロサムの論理がゼロサムの国際政治をしのいでいた。こうした状況は異例の結果をもたらした。1990~2017年にかけて世界の国内総生産(GDP)は23兆4000億ドル(約2650兆円)から80兆1000億ドルに拡大し、世界の貿易額はそれを上回るペースで成長。10億人以上が貧困から脱却し、乳幼児死亡率は50%以上低下した。電話サービスの利用者は10倍近く増えた。
市場崩壊、地政学時代復活の号砲
経済的目標よりも地政学上の目標が優先される世界に
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