18人もの死者を出した台鉄の特急脱線事故。早くから運転士の過失が報告されていたが、ここにきて、日本製の車両に設計ミスがあったことが発表された。果たして、この設計ミスはどの程度、今回の事故に影響を与えたのだろうか?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

日本車両製造の設計ミスが発覚
事故はなぜ防げなかったのか

台湾の脱線事故で、日本製車両に設計ミスがあったことが発覚しました。
18人もの乗客が亡くなるという大惨事。運転士に過失があったことは間違いなさそうだが、果たして日本製車両の設計ミスはどの程度、事故に影響を与えたのだろうか Photo:Reuters/AFLO

 10月21日に発生した、台鉄(台湾鉄路管理局)の特急列車「プユマ号」の脱線事故について、車両を製造した日本車両製造は1日、車両の安全装置に設計ミスがあったと発表した。

 同社によると、車両に搭載されたATP(自動列車防護装置)と呼ばれる安全装置には、運転士が装置を切った場合、運転指令所に自動的に通報される機能が付加されていたが、配線ミスにより正常に送信されなかったという。

 日本人観光客が多く訪れる台湾で、日本で製造された特急車両が、急カーブを曲がり切れずに脱線するという事故。福知山脱線事故を想起させる状況もあり、発生当初から日本でも大きな注目を集めていた。そこに突如浮上した設計ミス問題。日本車両製造は捜査中なので事故に関わるかどうかはコメントできないとしているが、設計ミスは事故原因に直結するものだったのだろうか。

 事故の直接的な原因は、140km/hものスピードで半径300メートル、制限速度75km/hの急カーブに突入したことによる脱線転覆で間違いない。問題はなぜ大幅な速度超過が生じたのか、それを防ぐことができなかったのか。これが焦点となる。

 日本ではATSやATCに分類される信号保安装置を海外ではATPと総称する。台鉄公式Webサイトによると、全線に「ETCS LEVEL 1」に準拠したATPが導入されているという。「ETCS LEVEL 1」とはヨーロッパの鉄道信号規格のひとつで、地上から送信された情報から、先行列車への接近や速度超過を常時監視して、必要な場合は自動的にブレーキをかける機能を備えていることを意味する。

 これはJR東日本の使用するATS—Pに相当する機能を持った安全装置であり、装置が機能していればカーブの手前で自動的にブレーキがかかり、制限速度以下に減速していたはずだ。

 ところが事故時、ATPは作動していなかった。事故前に運転士によって電源が切られていたのである。これは運転士本人も認めているようだ。しかし経緯については運転士と台鉄当局の主張に相違があり、運転士は指令所の同意を得て機能を切ったと主張するが、指令所は把握していなかったとしている。