週刊ダイヤモンド2018年11月10日号は「変われぬ東芝 変わる日立」です。本誌では、両社の創業期まで遡り、どのような浮き沈みの末に現在の差に結びついたのかを明らかにしています。週刊ダイヤモンド編集部では、歴代の担当記者が両社の経営戦略や業績を取材してきました。そこで、今週の特集に合わせて、両社において「中年期」と位置付けられる2000年代中頃以降に社長に君臨したトップのインタビューをシリーズでお届けします。第1回は週刊ダイヤモンド2008年4月12日号で掲載した、西田厚聰氏(2017年12月逝去)のインタビューです。同氏は東芝の社長を務めた2005年から2009年の間、同社の歴史に残る大きな経営判断をいくつも断行しました。その中でも、のちに同社を経営危機に追い込むことになる米原子炉メーカー、ウエスチングハウスを6200億円もの巨費を投じて買収することを決断したことは、政財界で大きな注目を集めました。(経歴、年齢は全て掲載当時のもの)
――米ウェスチングハウス(WH)買収の効果は。
WHが推進する加圧水型軽水炉、東芝が手がける沸騰水型軽水炉とも、米国を中心に海外での受注が順調だ。米国の原子力発電所の建設計画は、WH買収時には11基だったが、今では31基に増えた。近々また、WHが米国で数基を正式受注できる見通しだ。
WH買収によって、原発事業のフロントエンドからバックエンドまで一貫して構築できる体制が整った。3月、ロシアのアトムエネルゴプロム社(民生用原子力事業を独占展開する国営企業)と相互協力関係確立に向けた検討を開始する覚書を結んだが、われわれのそうした体制を評価してもらえたためだろう。
また、東芝の原発事業に賭ける意気込みが理解され、米電力会社NRGエナジーの改良型沸騰水型軽水炉受注にもつながった。
これらの相乗効果で、買収資金の回収計画も17年から14年に短縮できる見通しだ。今後の収益拡大で、10年程度まで短くできるのは間違いない。