「ふるさとの会」の自立援助ホームは、ガイドラインがなかった時期から個室だった。しかし現在の「3畳」という最低基準に対しては、1平方メートル、1辺が約32cmの正方形1個分だけ不足している。「認知症でも、がんでも、お金なくても、地域で最後まで暮らせることを証明してきたつもり」という滝脇氏は、「もちろん最低基準は重要」としつつも、「今暮らしている人の居場所が奪われないような方策のために、知恵を出し合ってほしい」と発言を結んだ。

「貧困ビジネス」対策は必要だろう。しかしそれが、良質でありながらも厚労省の想定と少しだけズレている既存の事業者を壊滅させてよいのだろうか。過去になかった何かをつくろうとする若者の試みを、アイデア段階で萎縮させていいのだろうか。私の思い過ごしならいいのだが、過去の経緯を見る限り、現実になる可能性の根拠が多すぎる。

 そして、厚労省資料にある「簡易個室」という用語が、私のそういう危機感に、ダメ押しの一撃を加える。

「簡易個室」の公認は
日本の「住」を破壊しかねない

 無料低額宿泊所の「簡易個室」は、現在のところ公認された存在ではない。厚労省資料には、「多人数居室、一つの個室をベニヤ板等で区切ったいわゆる『簡易個室』も一定数存在する」という形で登場している。

 無料低額宿泊所には、相部屋の多人数居室もあるのだが、2015年のガイドラインは「居室は個室」を原則としている。相部屋は今後、存在自体が認められなくなる可能性が高い。しかし、「簡易個室」が公認されると、相部屋に間仕切り壁を設置して「簡易個室」にすれば、面積等の基準さえ満たしていれば、現在も相部屋のままである劣悪な無料低額宿泊所が今後も生き残れることになる。もちろん、現在の「簡易個室」は、そのまま生き残れる。そして、「簡易個室」を認めない意思は、厚労省資料からは読み取れない。

 視点を変えて、自治体や福祉事務所の立場から無料低額宿泊所を眺めてみよう。一応は個室だがプライバシーはない「簡易個室」が数十室あり、管理人が常駐して入所者を監視・管理している施設は、むしろ望ましいものかもしれない。さらにスプリンクラーなどの防火施設が設置されていれば、理想的だ。