ウェルスナビの柴山和久社長Photo:Kazutoshi Sumitomo

次世代金融インフラを目指し、ロボアドバイザーによる資産運用サービスを立ち上げたウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久氏。財務省に9年間勤務した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て起業した彼は、「投資は富裕層だけのものでいいのか?」と問いかける。資産規模10兆円の機関投資家をサポートした経験もある柴山氏はなぜ、「現役世代ほど真剣に資産運用を考えるべきだ」と主張するのだろうか。

「投資=怖い」と考える日本人
日本の投資環境はガラパゴス化している

 投資と聞くと、日本ではいまだに「怖い」と感じる人が大半だろう。理由はいくつかある。1つはこれまでほとんど成功体験がなかったこと。実はこれ、世界で標準とされる資産運用の王道が、日本ではあまり知られていないことが大きい。

 資産運用の王道は「長期・積立・分散」だ。つまり、月々いくらと決めて積み立て、世界中の株や投資信託に分散投資をし、それを長期間保有し続けることで、局所的もしくは一時的に景気の波をかぶったとしても着実に資産を増やしていく。これが資産運用の王道であり、「コア」となるべきだ。

 ところが、日本ではなぜかこのコアの重要性が語られず、比較的リスクの高い商品ばかりに注目が集まってきた。

 最近の例で言えば、ビットコインなどの「仮想通貨」。一獲千金に成功した一部の投資家が「億り人」として注目される裏で、投資の初心者の多くが損失を被った。シェールガスや人工知能、ライフサイエンスなど特定のテーマに関係する銘柄を集めた「テーマ型投信」も、初心者には難しい商品だ。

 テーマ型投信はその時の旬の銘柄を組み入れて公開されるわけだから、事前にトレンドをキャッチできないと、高値でつかんでしまって損をしてしまう。旬は短く、安い時に買ってピーク時に売り抜けるのは投資のプロでもなかなか難しい。個別株やFX(外国為替証拠金取引)も同様だ。これらはすべて値動きが激しく、短期投資である点に特徴がある。

 投資を恐れて預貯金中心から抜けきれない人か、ハイリスク商品を買う人か。この両極端の投資スタイルしかない日本は、ガラパゴス化しているといえるのではないだろうか。