>>(上)より続く

思わぬ方向から飛んでくる矢
懸命な努力の末に

 Bさん(33歳男性)は結婚2年目で、新婚真っ盛りの楽しい日々を送っている。妻は妊娠したことがわかり、かねてから夫婦間で話していた通り退職して出産準備を進めていた。

 Bさんは会社であったことを妻に対してほぼつまびらかに話していた。愚痴を聞いてもらい、前向きな話題を一緒に共有してくれる妻の存在はBさんにとってありがたかった。妻もBさんのそうした話を楽しみにしてくれているようであった。

 社内で配置換えがあり、Bさんに部下ができた。Bさんにとって単なる後輩ではない初めての部下であり、その指導・育成をBさんにがっつり託そうとする人事の思惑もあった。

 Bさんは張り切った。

 部下は頼りなく生意気なところもあるが、おおむね素直で仕事に一生懸命に取り組んでいた。Bさんが妻に会社の話をする際、自然この部下の話題が多くなった。妻は時に笑い、時にアドバイスを挟みながら部下の話題を聞いていた。妻は面識がないとはいえ、Bさんと同じく部下のことをかわいく思っているようであった。

 そんなある日のこと。いつもと同じように部下の話を聞いていたBさんの妻は驚きの声を上げた。

「えっ。◯◯さん(部下)って女性なの?」

「そうだよ。あれ、言ってなかったっけ?」

「ずっと男性だとばかり思っていた」

「あれ、そうか。知っていると思っていた」