さらに、その従業員が課長のフェイスブックで休日の行動も探していると、「本日の釣果!見事なサイズでした!」のタイトルを見つけた。従業員は大きな魚を抱えて満面の笑みで写真に写っていたページを社長に見せ、「釣りが趣味であり、休日はほとんど釣りに出かけて、仕事はしていないようです」と話をすると、これらの証拠を印刷し、丸山社長に手渡した。

支店長が陥った「逆パワハラ」地獄、暴言三昧の部下とどう戦うか本連載の著者・石川弘子さんの
『あなたの隣のモンスター社員』
が好評発売中!
文藝春秋刊、750円(税別)
職場トラブルに悩む
ビジネスパーソン必読本!

急増するモンスター社員の相談例。一見普通の人にしか見えないモンスターたちは何を考えているのか――。特徴や心理を解き明かしながら、対処法や組織作りをわかりやすく解説

 丸山社長は「よくやってくれた、ありがとう」とその従業員をたたえるとともに、心の中で「四ツ谷、これまでよくもだましていたなあ!許さん」と怒りのマグマが噴出していた。

 後日、丸山社長はこれらの決定的な証拠を見せると、四ツ谷課長は観念し、不正の事実を認めた。処分については丸山社長も悩んだが、最終的には四ツ谷課長の虚偽の休日出勤の手当や接待費は分割で返金してもらうとともに、今回の事態を重く見た丸山社長は降格処分を決め、G支店に異動させた。

 丸山社長は当初、懲戒解雇(注2)を考えたが、四ツ谷本人が「解雇だけはしないでほしい」と泣きついてきたことと、三田支店長のほうも「異動して四ツ谷課長と顔を合わせないのであれば、それで構わない」と言うので、意向を酌んだのである。

 その後、三田は無事に復帰して元気に活躍している。F支店の業績も徐々に上向いてきたようだ。丸山はホッとすると同時に、自分が今までF支店で起こっていた現場の状況を把握できず、3人も支店長が短期間で退職してしまったことに心を痛めていた。

 元々、現場に長くいた部下や、技術や知識面では上司よりスキルがある部下から逆パワハラを受ける上司も少なくない。上司は「部下から嫌がらせを受けている」と言ってしまうと、自分の管理職としての能力が疑われると思ってしまい、1人で抱え込んでしまい、体調を崩すケースもある。体調を崩す前に、会社の相談窓口などを利用してほしい。

 もし、会社にそのような窓口がない場合は、行政等が開設している窓口(注3)で相談してほしいと思う。

(注2)残業代等の不正請求で懲戒解雇が有効とされる主な判断基準は、以下の2点である。(1)会社の勤怠管理の体制が整っていたかという点と、(2)本人が悪意を持って行ったかという点である。今回のケースにあてはめると、三田支店長が管理者として四ツ谷課長の勤怠管理をしっかり行っていなかったと判断される可能性もある。その他にも多面的な判断が必要とされるのであくまでもケースによる。

(注3)総合労働相談コーナー(都道府県労働局)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
法テラス(日本司法支援センター)
https://www.houterasu.or.jp/index.html

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。