英国のEU離脱問題で
「離脱協定案」が暫定合意

EU離脱をめぐる英国政治の合意形成から「民主主義の凄み」が垣間見える

 英国は欧州連合(EU)と、「離脱協定案」を交渉間レベルで暫定合意した。協定案は、2020年末の離脱移行期間終了後も懸案の英・アイルランド国境管理問題が解決するまでは、英国がEUとの関税同盟に当面残留することが柱となっている。また、今回の合意では離脱移行期間終了後に結ばれる通商協定について「自由貿易を推進し、規制や税関手続きで連携する」という基本方針が盛り込まれた。これを受けて、テリーザ・メイ英首相は臨時閣議を招集し、協定案について、了承を得た。

 しかし、英・アイルランド国境管理問題の解決が長引けば、英国がEUの規制・ルールに従い続ける可能性が残る。与党・保守党内の「離脱強硬派」が「英国の主権を取り戻すことができず、何のための離脱かわからない」と猛反発し、交渉担当者だったドミニク・ラーブEU離脱担当相までもが、「協定案を支持することはできない」として辞任する事態となった。

 また、メイ政権と閣外協力している北アイルランドの民主統一党(DUP)も、英国のうち北アイルランドだけにEUの規制が適用され続けることを批判し、野党・労働党はメイ政権・保守党の混乱に乗じて解散総選挙に追い込み、政権交代を狙っている。さらに、親EU派からは、EU離脱の是非を問う国民投票の再実施を求める声が上がっている。EU離脱の第二関門は、年末から年明けにかけての英国・EU両議会での承認だが、英国政治はまさに「カオス」と呼んでも過言でない状況だ。

 英国に支店や製造拠点を置く日本企業は、「ノーディール・ブレグジット」となると、EU域内で自由な営業ができなくなったり、英国からEU域内への輸出に高関税がかかる懸念がある。そのため、日本国内では、英国のEU離脱に関して、ネガティブな見方が広がっている。