週刊ダイヤモンド2018年11月24日号第1特集は「米中戦争 日系メーカー危険度ランキング」です。米中の技術覇権、軍事覇権を懸けた戦いは、長期戦になることが決定的です。日本企業にはどう影響するのでしょうか。特集取材班は東海東京調査センターの杉浦誠司・シニアアナリストの協力を得て、自動車・電機120社を対象に、米中経済戦争を機に迫られる投資リスクを試算し、「対米投資プレッシャーランキング(1~120位)」と「対中投資プレッシャーランキング(1~30位)」を作成しました。今回、両ランキングのトップ10を特別にダイヤモンド・オンラインで公開します。全ランキングは本誌をご覧ください。

保護主義を前提とした
体制整備が急務の日系メーカー

 マツダがトヨタ自動車と合弁で2021年の稼働を目指している米アラバマ工場。この建設計画は、トランプ米大統領による通商政策を念頭に置いて立案されたものだ。総投資額は16億ドル(約1800億円)に上る。

 マツダにとっては、12年に米フォード・モーターとの合弁生産会社から撤退して以来の米国再進出となる。再進出と言うと聞こえはいいのだが、実際にはやむにやまれぬ事情があった。

 マツダは自由貿易のメリットを最大限に生かしたサプライチェーン体制を築くため、14年稼働のメキシコ工場へ北米向けの生産を集約させる予定だった。

 だが、トランプ大統領の誕生で目算は狂った。NAFTA新協定では、結果的に米国生産を促す中身になった。米国で販売される車は米国で生産するべき──。トランプ方針をなぞるように、マツダは米国再進出を決めたのだ。

 反グローバリズムの台頭で、自由貿易下で日系メーカーが構築した事業構造にひずみが出ている。

 自由貿易から保護貿易へ──。米中の2大市場に依存する日系メーカーは、保護主義を前提とした生産、開発、販売体制を早急に構築しなければならない。

 そこで、本誌では東海東京調査センターの杉浦誠司・シニアアナリストの協力を得て、日系メーカーが米中経済戦争を機に迫られる投資リスクを試算した。

 具体的には、米国・北米の売上高依存度の割に現地への事業投資が進んでいない企業を順位付けした「対米投資プレッシャーランキング」と、同様に「対中投資プレッシャーランキング」を作成した。

 米国・北米、あるいは中国・アジアの売上高/資産ギャップの値が大きいほど、現地への投資が進んでおらず、今後投資のプレッシャーが高まるリスクがある。

 対米投資プレッシャーランキングでは、戦略の修正を迫られたマツダが3位となった。1位のGMBや2位の市光工業と同様に、3位のマツダも現時点では米国に生産拠点を保有していない。

 ちなみに、マツダの場合、アラバマ工場への投資持ち分800億円をほぼ有形固定資産として繰り入れて、現状の売上高の構成比で変わらないと仮定すると、売上高/資産ギャップは23.3から2.4へ大幅に改善する。アラバマ工場への投資は、トランプの保護主義リスクを先読みしたものだともいえそうだ。

対米投資プレッシャーランキング11~120位は本誌に掲載しています 拡大画像表示

 また、トヨタ、日産自動車、ホンダの自動車大手3社はそろってランキング下位に集中する結果になった。

 度々トランプのTwitterで“口撃”されるトヨタだが、実は現地で十分過ぎるくらいの投資が実行されている。

 自動車部品は、完成車メーカーに連れ立って現地化を加速させている。そのため、電機や機械などの業種に比べても、売上高/資産ギャップが低く、ランキングの下位を独占している。