国内最大の官民ファンドである産業革新投資機構(JIC)について、その存在意義や経営陣に対する高額な報酬等が話題となっている。これら問題点について解説する。(ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長 安東泰志)
産業革新機構の期限の延長と
新しい経営陣
5月、国会で産業競争力強化法等の一部を改正する法律が成立し、産業革新機構を「産業革新投資機構」(以下「JIC」)に改組し、その設置期限を2024年から9年間延長することが決まった。機構の傘下に期限15年程度の新ファンドを設立するという。
新組織の初代社長には、三菱UFJフィナンシャル・グループ元副社長の田中正明氏、取締役会議長にはコマツの坂根正弘相談役が就いた。当時、世耕弘成経産相は「政府が基本方針を示し、後は投資のプロにお任せする」と述べ、期待感を示したとされる。
現在日本には14もの官民ファンドが乱立しており、その多くが十分に活用されていないとされている。
第2次安倍政権以降に盛んに官民ファンドが作られるようになった背景として、07年頃から、財務省が一般会計予算の膨張を抑える切り札として、「産投会(産業投資特別会計)」と呼ばれる、NTTやJT(日本たばこ産業)株の配当や売却益を歳入とした特別会計の資金を使ってファンドを作ることを各省庁に提案したことがあるというのはすでに定説になっている。
原資が産投会という特別会計であるから一般会計予算は使っていないように見える巧妙な仕組みなのだが、本来は財政収支の改善に使われるべきだった資金が流用されているのであるから、これらのファンドの真の原資は紛れもなく国民の税金であることに留意する必要がある。