具体的な形は不明だが?
政府が打ち出す「官民基金」

 昨年末に政権が自民党に戻り、年が明けてから、安倍政権が本格的に始動した。政権は当面、夏の参院選挙を意識して、憲法改正や原発問題といった激しい議論を呼ぶようなテーマへの注力は避けて、デフレ脱却と経済成長を目指す経済政策に力を入れるようだ。確かに、景気対策なら国民は反対しまい。

 デフレ脱却を目指す「アベノミクス」は、期待の段階から円安・株高をもたらした。さらに市場と国民の期待に応えるべく、組織・政策両面で様々な施策が矢継ぎ早に発表されている。

 政権が政策実行に関して強い推進力を持てるのは、選挙勝利後しばらくの間だから、この時期に動くこと自体は悪くない。ただ、報道を見ていると、何とも気になる問題がいくつかある。

 その1つが「官民基金」あるいは「官民(協同)ファンド」だ。

 安倍政権の具体的な政策構想の中で「官民基金」という言葉が最初に出てきたのは、選挙期間に入る前から語られていた、円高対策としての官民共同出資の「外債ファンド」構想だったろうか。

 その後にも、製造業の「ものづくり」であるとか、科学技術であるとか、様々な対象について官民基金の構想が打ち出されており、『日本経済新聞』の1月8日朝刊トップには、「官民基金 成長戦略の柱」との見出しが打たれるに至っている。

 外債ファンドの場合、直接の為替介入は、諸外国から「為替相場操作国」との批判を受けかねないし、日本のファンドが欧米の国債などの買い手になるということなら、外国の政府に多少恩を売ることができるから、為替相場への介入をいわばオブラートに包む効果が期待できる。

 しかし、そもそも外債投資が儲かる環境ができるなら、民間の資金は放っておいても外債に流れるだろう。「官」が絡む意義はどこにあるのか。また意義があるとすれば、それは特定の民間主体に対する利益供与にならないのか。