第二次安倍政権になってから、いわゆる「官民ファンド」が花盛りである。筆者は、既に政権発足直後の13年1月時点で、『粗製乱造「官民ファンド」の欺瞞』(連載第29回)と題して官民ファンドの膨張に強く警鐘を鳴らしていたが、残念ながら、その懸念は現実のものになりつつある。さすがに最近は、良識あるマスコミからは批判的な記事も出るようになってきたが、政府や銀行に遠慮があるのか、まだ若干腰が引けているようだ。この辺で、官民ファンドの、どこが、なぜ、有害なのか、今一度総括してみることにしたい。
乱立する官民ファンド
表1は、現時点で存在が確認できる官民ファンドを一覧にしてみたものだ。主だったものだけで、10もの官民ファンドの存在が確認できる。この他に、地域金融機関が官の出資を受けて全国津々浦々に設立している「地域ファンド」を含めると、まさに有象無象の無数の官民ファンドが乱立していることがわかる。その合計出資枠上限は不明であるが、最大手の産業革新機構と地域経済活性化支援機構だけで3兆円程度はあり、すべてを合計すれば4兆円に迫る規模になっていてもおかしくない。しかも、官民ファンドを使う動きはとどまるところを知らない。この秋にも、国土交通省が主導して「海外交通・都市開発事業支援機構」なる1000億円もの規模の官民ファンドを立ち上げるという。
官民ファンドを使おうとする省庁も、経済産業省・国土交通省・文部科学省・内閣府・金融庁(地域ファンド)など多岐に亘り、どこからも歯止めがかからない状況だ。それもそのはず、その背景を辿ると、本来はこうした支出をストップする立場にある財務省にたどりつく。07年頃から、財務省が一般会計予算の膨張を抑える切り札として、「産投会(産業投資特別会計)」と呼ばれる、NTTやJT(日本たばこ産業)株の配当や売却益を歳入とした特別会計の資金を使って、これらのファンドを作ることを各省庁に提案したというのはすでに定説になっている。本来は国の借金を減らすのに使われるべき資金が、官僚同士のいわば「馴れ合い」によって都合よく使われていると言っても過言ではない。