忖度、パワハラ、同調圧力、いじめ、ネット炎上、無責任主義……。なぜ、日本の組織は息苦しいのか? 会社から学校、家族、地域コミュニティ、ネットまで、日本社会が抱える問題の根源には「空気」という妖怪が存在する。それは明治維新、太平洋戦争、戦後の経済成長にも大きく作用し、今日もまったく変わらず日本人を支配する「見えない圧力」である。15万部のベストセラー『「超」入門 失敗の本質』の著者・鈴木博毅氏が、40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する。佐藤優氏推薦!「日本型組織の病理がわかる。組織で巧みに生き残るための必読書」
旧日本軍からネット炎上まで
今も昔も変らず日本人を支配するもの
1977年(文庫版は1983年)に出版された山本七平・著『「空気」の研究』という書籍があります。この書は、日本人の特殊な精神性や日本的な組織の問題点を指摘する存在として、世に出て以降ずっと読み継がれてきました。
同書を一読されたほとんどの方は、この書が今の日本の何か重要な問題を描き出していると感じるのではないでしょうか。
神経をすり減らす人間関係、個性より周囲との協調性を優先する教育、繰り返される組織内での圧力などが今、問題となっています。
息を潜めて、目立つことを避けながらも、周囲を常に意識しなければ不安にさせられる「相互監視的」な日本社会のリアル。誰もが「空気」に怯えながら、「空気」を必死で読む日々に疲れ切っているように見えます。
山本氏は、世界の歴史や宗教への深い造詣、戦地での極限の体験などから、日本人を支配する「空気」という存在を、多角的に描写してその力学を解き明かしています。『「空気」の研究』で鋭く描写された多くの理不尽な構造は、残念なことに現代日本でもまったく変わらないままです。