5月5日の北海道電力泊原子力発電所3号機の停止をもって、日本国内の全原発の稼働が停止になるという、異例の事態となった。政府を含め社会全体で原発が稼動するかどうかに目線が集中し、原発が稼動しない場合にどうするかについて思考停止に陥ってきた感がある。しかし、電力不足を前提とした対策の遅れは、企業活動や国民生活の負担に直結する。このことを強く認識し、原発が再稼動をしないことを前提に全国で夏の節電を準備すべきだ。

原発は再稼動しないことを
前提に対策を考える

たきぐち・しんいちろう/1969年生まれ、93年3月京都大学人間環境学研究科修了、01年5月テキサス大学経営大学院修了。外資系コンサルティング会社、不動産投資ファンド、エネルギー関連アドバイザリー会社を経て、09年2月より現職。

 現在、原発の再稼動がどうなるかが大きな問題となっている。現状の電源ポートフォリオは、全国の発電実績ベースで、2010年時点では原子力発電約31%、火力発電が約59%、水力発電を含む再生エネルギー(再エネ)で約9%の電源構成だが、東京電力福島第1原子力発電所の事故後、原子力発電所の定期点検後の再稼働が見込めない状況となっており、2012年の5月5日の北海道電力泊原子力発電所3号機の停止をもって、日本国内の全原発の稼働が停止になるという、異例の事態となった。

 この夏の原発の稼働状況は不透明であり、特に原子力発電の割合の高い関西電力管内の電力需給の逼迫が危惧されている。政府のストレステストをベースにした安全基準と立地自治体、近隣自治体の求める安全水準に隔たりがあり、再稼動の見通しは立っていない。