この驚異的な勢いを目にした中国の通貨当局は危機感を募らせ、さすがに阻止行動に出た。2017年に入ってから、法人だけではなく、1人当たり年間5万ドルに相当する外貨の両替取引枠の規制にまで踏み切ったのだ。

 外貨購入を希望する個人に対して、銀行の窓口では、「海外で不動産や証券、保険を購入してはならない」と書かれた申請書の提出が求められた。必死で資本流出に歯止めをかけようとする姿を、日本のメディアは「なりふり構わぬ手段」と報じたほど、徹底したものだった。

 こうした制限の強化により、2017年に入ると、中国企業による海外企業の“買収熱”は一気に冷め、海外M&Aの総額は1214億ドルと前年比42%減となった。また、海外不動産を物色していた個人も冷めていき、2017年の春先には、富士山の麓にある土地の販売価格が一気に50%も下がったほどだ。

 こうした事態に、「買い尽くされるのではないか」と心配していた日本の不動産業界は、一転して「どうすれば中国人に買ってもらえるのか」と悩み始め、中国人向けの不動産仲介から手を引く業者すら出てきた。

1ヵ月で16億円分の契約を
成約させた不動産販売アプリ

 そうした環境下で、逆に中国人向けの不動産販売に特化したプラットフォームの存在が筆者の目を引いた。「神居秒算」というアプリだ。彗星のように現れ、人気を博しているこのアプリを開発したのは、NeoXという会社だ。

 2016年末に設立、17年2月にアプリを正式リリースした。中国人に対する不動産販売を事業のメインとする会社としては、まさに最悪のタイミングでの船出だったのだ。

 逆風を受けながら、荒海に出航したこの会社の行方を、固唾を呑んで見守っていた関係者も大勢いたと思う。しかし2年が経った今、その歩んできた道のりを振り返ってみると、驚くべき実績を獲得したと拍手を送りたいほどだ。例えば、このアプリを通して成約した契約は、10月分だけで約1億元(約16億円)にまで達した。