マッカ(メッカ)とマディーナ(メディナ)というイスラム教2大聖地の守護者であるスンニ派王国サウジアラビアは、新皇太子の下、隣国のアラブ首長国連邦やエジプトとともに、イラク、シリア、レバノン、イエメン、バーレーンなどと連携してイランを押さえ込もうと政治的、軍事的介入を強めている。

 一方で、こうしたサウジなどの動きを牽制するのが湾岸の半島国家カタールだ。

 その膨大なガス資源収入を背景に、トルコなどとも連携しつつ、カタールはシリアを含む各地のムスリム同胞団系勢力を支援して政治的影響力を拡大しようとしている。

 こうしたカタールの動きに対し、ムスリム同胞団を敵視するサウジ、UAE、アラブ首長国連邦は今後も対決姿勢を崩さないだろう。

 こうしたイランとサウジを中心にしたアラブ諸国の対立、さらにカタールを加えた三つどもえに影を落とすのが、「中東回帰」を強めるトルコの動きだ。

 EU正式加盟を事実上、断念しつつあるトルコは、同国の活路を再び中東・中央アジア方面に見いだし、特に最近、シリア内戦への介入を強めている。

 さらに、クリミア侵攻事件以降に欧米から経済制裁を受けているロシアも、シリア政府への支援を強化しつつ、経済制裁解除に向け米国に対する牽制を強めている。

 その結果、シリア内戦は、イスラム国が壊滅状態にあるとはいえ、収束にはまだまだ時間がかかるだろう。

 これに対し、米国政府内部では、対イラン強硬策について意見が一致しているものの、その他の中東政策については意見が割れているようだ。

 国内政治上、トランプ氏はアフガニスタンなど中東での米軍プレゼンスを削減したいのだろうが、国防総省など外交安全保障の専門家たちは、過早かつ大規模な撤退には一貫して反対しており、政権内は必ずしも意見が収斂していない。

考えられる「6つのリスク」
ホルムズ海峡封鎖なら日本に影響

 こうした状況のもとで「記者殺害」事件を引き金に、中東湾岸地域で考え得るリスクについて、筆者の見立てを記しておこう。

(1)米国・イラン軍事衝突の可能性

 カショギ事件により、サウジ王政の国際的権威が失墜・地盤低下すれば、イランが一層、影響力を強める中、サウジとイランのバランスが崩れ、中東湾岸地域でのイランの実質的支配力が拡大する可能性は否定できない。