ゆるやかに弧を描く7人分のカウンターのまん中に埋め込まれている丸い煮込み鍋。黒々とした煮汁がグツグツ、グツグツと沸き立ち、湯気がもうもうと上がっています。この煮えたぎる煮込み鍋が、門前仲町名物「大坂屋」の大きな特徴です。

 店の創業は大正13年。現在の女将のお父さんが、この近くで屋台の煮込み屋さんを開いたのが始まりだそうです。その後、戦時中は一時休業していたらしいのですが、戦後また、ここ門前仲町の地に「大坂屋」を再開したのだそうです。

 戦後の闇市が発祥のように思われているもつ煮込みですが、実は明治時代から労働者の滋養食として楽しまれてきたらしく、そのころは、もつを串に刺して煮込むのが一般的だったのだそうです。

 大正時代に創業したこの店の煮込みも、串に刺した牛もつを、その串のまま煮込むという昔ながらのスタイル。シロ(腸)、フワ(肺)、ナンコツ(食道)という3種類の串(1本130円)が選べます。

 席に座るとすぐに出される定番のお通しは、小皿に盛られた大根とキュウリの漬物。これを添えられた小さなフォークでいただくのも、箸を使わないこの店の特徴です。

 煮込み3種をそれぞれ1本ずつもらって、飲み物には焼酎の梅割り(400円)のロック。これが独特の濃厚な味わいを誇るこの店の煮込みによく合うのです。

 この店で忘れてはならないのが玉子入りスープ(330円)です。注文を受けてから、煮込み鍋の中に生卵を殻ごと投入し、4~5分間クツクツと半熟状態に仕上げられます。殻を取って小鉢に入れ、煮込みの汁を入れたらできあがり。