
デザインの役割は、いまやプロダクトや広告表現にとどまらない。企業の理念や戦略、組織文化に至るまで、その姿勢を社会にどう伝えるかという経営課題と深く結び付いている。本連載ではこれまで、「深さ・幅・高さ」という視点からCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)に求められる条件を論じてきた。では、それを実際の企業経営に落とし込むとどうなるのか。最終回では、三つの問いを手掛かりに、企業がCDOをどのように位置付け、どう活用していくべきかを考える。
CDOは企業におけるデザインの価値を
再設計する役職
これまで本連載では、「深さ・幅・高さ」という視点からCDOの条件を論じてきた。専門性を磨き(深さ)、組織を横断し(幅)、経営の意思決定に関与する(高さ)――そうした能力と視座を備えた存在こそが、これからの企業に求められるCDOであると述べてきた。
では、それを実際の企業経営に落とし込むとどうなるのか。CDOとは、単に優れたデザイナーが就く役職ではない。企業が自らをどのように再設計するのかという問いと不可分の存在である。
そのとき鍵になるのが、「何をデザインするのか」「誰とデザインするのか」「何のためにデザインするのか」という三つの問いである。これはCDO個人の哲学であると同時に、組織の設計思想を映し出す問いでもある。
「何をデザインするのか」という問いは、企業がどこまでをデザインのスコープと定義するのかという問題に置き換えられる。プロダクトや広告表現にとどめるのか、それとも経営メッセージ、ブランド戦略、組織文化にまで広げるのか。その定義によって影響範囲は大きく変わる。
「誰とデザインするのか」という問いは、デザインをどの部門と接続させるのかという問題である。事業部門、人事、広報、R&D――どの領域と対話し、どの意思決定に関与させるのか。CDOの役割は、組織の中でどの位置に置かれるかによって決定付けられる。
そして「何のためにデザインするのか」という問いは、企業がどのような姿勢を明確にしようとしているのかという問いにほかならない。理念や価値観をどのように社会へ提示し、どういった未来を目指すのか。その姿勢を形にする営みこそが、デザインの本質である。
この三つの問いに対する企業の答えが明確であるほど、CDOの役割は定まり、力を発揮することができる。逆に、それが曖昧なままでは、CDOは単なる肩書に終わるだろう。
CDOを置くとは、役職を増やすことではない。企業が自らの価値創造の在り方を問い直し、組織を再設計するという意思表示である。この最終回では、これら三つの問いを手掛かりに、企業はCDOをどのように位置付け、どう活用していくべきかを考えていきたい。







