10月3日の原油相場では、米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル当たり76.90ドル、欧州の北海ブレントは同86.74ドルと、共に2014年11月以来の高値を付けた。

 背景には、米国の対イラン制裁による需給逼迫懸念や、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の合意で貿易摩擦への懸念が後退したことなどがあった。

 しかし、その後、サウジアラビアとロシアが非公式に増産で合意していたとの報道や、世界的な株式相場の急落を背景に原油相場は下落した。

 10月下旬まで増産姿勢を示していたサウジだが、11月に入ると一転、減産を志向するようになった。サウジにとっては、足元の原油の需給緩和や相場下落が想定外だったということであろう。

 11月2日には、米政府がイラン産原油の禁輸措置について、日本、中国、インド、韓国、トルコ、ギリシャ、イタリア、台湾の8カ国・地域は180日間、適用除外とする方針を明らかにしたことがサプライズとなって、需給逼迫への懸念が和らいだ。

 11日に、OPEC(石油輸出国機構)と非加盟産油国は、アブダビでJMMC(共同閣僚監視委員会)を開催し、原油市場の状況について議論が行われたようだ。

 その結果を踏まえて、翌12日にはサウジのファリハ・エネルギー相が、19年は18年10月比で日量100万バレルの減産が必要との分析結果で産油国が一致したと表明した。サウジ自身は12月に50万バレルの減産を行う方針も明らかにした。これらを受けて、需給引き締まり観測が強まり、原油相場は上昇していった。

 しかし、その後、トランプ米大統領がツイッターで「サウジとOPECが減産しないことを望む。原油価格は供給量に基づきもっと引き下げられるべきだ」と述べた。これにより売り圧力が強まり、結局、この日に下落しただけではなく、翌13日も大幅下落した。

 トランプ氏は原油相場を高過ぎるとしていたのに対して、サウジは原油安を懸念し、減産で相場下落に歯止めをかけたい意向とみられる。ロシアは少なくとも13日の相場急落前までは、原油相場は適正水準に近いとの見方であった。

 12月6~7日に予定されるOPEC総会と非加盟産油国も参加するOPECプラス閣僚会合では、19年の減産の是非などが協議される。トランプ氏からの圧力はあるが、産油国の事情が優勢され、減産が決定される可能性が高い。

 ただし、サウジは日量140万バレルの大幅減産を検討しているのに対して、ロシアは大幅減産には消極的とされる。現時点での落としどころは、やや小幅な減産となるだろう。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)