そこで力を発揮したのが、キャッシュレス決済である。雨と寒さでかじかんだ手でお金をガサゴソ探して用意したり、お釣りを受け取ったりすることなく、ワンタッチで支払いができた。筆者は事前にフジロックでキャッシュレス決済ができるという情報を事前に知っていたため、ストレスなく買い物ができたが、現金で支払っている参加者はさぞや大変だっただろう。支払いがスムーズだと、列に並んでいる他の人にも迷惑がかからない。

 以来、日常の生活でも、コンビニやスーパー、タクシーなどでキャッシュレス決済をすることが増えた。急いでいる時、会計でもたついている人を見ると、「みんなキャッシュレスにすれば、スムーズにレジを済ませられるのに」というモヤモヤを感じることもある。安倍首相が消費増税の経済対策としてキャッシュレス決済利用によるポイント還元を打ち出したこともあり、今後、日本社会のキャッシュレス化は加速しそうだ。

 しかし、現金信仰が強い日本では、今、 普及し始めているキャッシュレス化に対して、モヤモヤする人もたくさんいる。今回は、安倍首相の政策や経済効果、社会に及ぼす影響などはひとまず置いといて、あくまで人々の日常に浸透しつつあるキャッシュレス化に対し生活者目線から感じるモヤモヤを、周辺の聞き取り調査を参考に紹介していこう。

現金派が感じるキャッシュレスへの抵抗感

 キャッシュレス化に抵抗感がある人の意見として、最も多かったのが「そもそも現状の現金決済で不満がないのに、わざわざキャッシュレスに移行するのが面倒くさい」というものだ。この意見はもっともで、現金であることの不便性が明確に示されない限り、いくらキャッシュレス決済の利便性やメリットを叫んでも人々はなかなか動かない。

「大きい買い物をする場合は、現金を持ち歩くのが怖いのでクレジットカードが便利ですが、日常の買い物は現金でやりたい」という意見もある。いくら払ったかが“物理的”にわかる日本人に染み付いた現金への身体感覚は、日々の家計を運営する上で重要な指標になる。もちろん、デジタルでも出入金の管理はできるものの、実際に使った“感覚”が残る現金のほうがしっりくるという人は、まだまだ多いのが現状のようだ。割り勘など、細かいやり取りがしやすいというところに、現金のメリットを感じている人もいる。

 また、意外と多かったのが、「キャッシュレスにすると、紛失しそうで怖い」という抵抗感だ。そんなこと言うなら、現金だって紛失するし、再発行できないぶん、現金のほうが不便ではないかと思わなくもないが、キャッシュレスの場合は個人情報と紐付いている場合があるため、紛失した際のリスクを現金より感じることもうなずける。