介護保険で真正面から取り組まれなかった認知症ケア。その後、認知症本人や家族のつらい状況が理解されるようになり、やっと認知症の人への考え方や基本理念、採るべき方針、政策などに向き合う動きが出てきた。それらを集約させた「認知症基本法」の制定に向け動きが高まってきたのである。
公明党が9月に「認知症施策推進基本法案・骨子案」を定め、自民党も早ければ年内に独自案を提案する予定だ。来春には与野党の調整を経て、6月頃までには議員立法として通常国会に提出されそうだ。
議論のスタート台になる
「公明党骨子案」の内容
基本法は、その領域の個別法に対して優越的で、「親法」のような地位にある。介護保険法をはじめ介護、医療、福祉の分野の行政諸政策は、基本法の理念や目的などに沿わねばならない。それだけに、一言一句が注目される。
現在、原子力基本法をはじめ農業基本法、教育基本法など49の基本法がある。
「認知症基本法」については、公表されている公明党の骨子案が今後の議論のスタート台になる。
その冒頭で基本法の目的として「認知症に関する施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに認知症施策の推進に関する計画の策定について定める……」とある。
基本理念としては「認知症施策は……認知症の人がその有する能力に応じ、その意思を尊重し支援を受けられ」と記し、医療・介護サービスなどが「認知症の人の意向に応じ、常に認知症の人の立場に立って行われるよう」と続く。
次いで、国に基本計画の策定を責務とさせ、自治体に推進計画の策定を促し、地域づくりや認知機能の低下予防、成年後見制度の利用、医療介護サービスの提供、若年性認知症の人の就労促進などの施策を提唱している。
また、9月21日を認知症の日とし、9月を認知症月間と定める。