高齢者の病院死亡率が世界最低のオランダ
オランダの高齢者ケアの視察を毎年のように続けている。今年6月もアムステルダム、ライデン、ホールンなどを1週間にわたり回った。
世界の高齢者ケアの現場をいろいろ見てきたが、オランダが最も先端を走っていると見極めたからだ。その指標は、病院での死亡者割合が世界で最も少ない国であることだ。
何処で亡くなるかが、その国の高齢者介護・医療への考え方やシステムを明確に示している。「大病院・大施設から在宅へ」という基本的な潮流は多くの先進国で共通している。「Aging in Place」というスローガンで示され、日本では「地域包括ケアシステム」と呼ばれる。
そのための施策として在宅医療と在宅介護がある。在宅医療と在宅介護が国中に浸透していれば、病院など医療機関での死亡率が下がる。
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日本では80%弱の人が医療機関で亡くなる。とても多い。「病院信仰」が根強いためだ。欧州諸国では、ほぼ50%前後である。福祉先進国と言われるスウェーデンでは42%。その中で、オランダは30%を下回る唯一の国である
病院の他の死亡場所は施設と自宅である。ただ、施設と言っても、最近の欧州では、自宅にいる時とあまり変わらない環境や部屋づくりで、引っ越した「第2の自宅」になりつつある。
つまり施設の「自宅化」で、「自宅死」の多寡はあまり指標にならない。「医療機関(病院)」での死亡率の低さで、その国のケアレベルを図ることができる。そこで選ばれるのが、病院死亡率29.1%と、世界最低のオランダなのである。
世界で初めて安楽死法を法制化
今回のオランダ視察で、最も印象に残ったのは「安楽死」のあり方だった。安楽死とは、自分の死を自分の自由意志で決めること。延命治療を断り、緩和ケアを受けて旅立ちを待つのは尊厳死で、安楽死とは異なる。
オランダは世界で初めて安楽死法を法制化した国である。がん末期患者の苦しみを解放するため、が元々の理由だった。その後、終末期の枠が外され、精神的苦痛も加味されたと聞いていた。
ところが、今回、安楽死に立ち会った医師から、「歩き出すとすぐ転んでしまう。でも車椅子は利用したくないし、入院、入所も嫌」という高齢者が望みどおりに安楽死した事実を知らされた。さらに、認知症でも安楽死できた人の話も聞くことができた。