腹心の部下だけが覆面部隊として動いていたならまだしも、複数の執行役員が行っていることを取締役会が知らなかったとしたら、会社のガバナンスが機能していなかった証拠。つまり、“知らぬはボード(取締役会)ばかり”という状態だったわけでしょう。

 日産では社外取締役がずっと1人の体制で、指名委員会や報酬委員会がないことが今回の報道でも指摘されています。監査役設置会社の4割近くが、任意で指名委員会、報酬委員会や社外取締役を置いているという流れと逆行していたのは明らかです。

 日産は「無資格検査」でも大きな問題になりましたが、そのときの構図と今回の問題は非常に似ています。無資格検査の問題が明らかになった際の報道では、無資格者が有資格者の判子を有資格者の立ち合いなしで利用できる仕組みにするなど、組織的に不正が行われたと報じられています。

 現場で違法行為を組織的に行っていたにもかかわらず、経営陣は本当に知らなかったのでしょうか。その後、排ガスや燃費データの改ざんなども相次いで発覚しましたが、日産はどこで司法取引が起きてもおかしくないような会社の風土になってしまっていたといえます。

――今回の問題では大きな成果を上げていますが、そもそも日本で「司法取引」の制度が導入された背景を教えてください。

 先ほども述べましたが、司法取引は比較的軽微な罪を許してでも「巨悪」を捕まえて、世の中を良くしたほうがいいという考えから導入されたものです。

 この制度が欧米にはありながら日本になかったのは、「因果応報」、つまり悪いことをした人はそれ相応の報いを受けなければならないという文化が日本に根強くあったからです。以前は、司法の世界では「取引」という言葉自体に拒絶反応がありましたが、いつまでも企業の不祥事がなくならない流れを受け、「世の中を良くするという目的が達成されるなら」という現実的なものの考え方へと変わってきたと考えられます。

 また、報道によると、今回の事件で司法取引に応じたなかには外国人執行役員が含まれていると言われており、司法取引を文化として理解していた人ではないかと推測されます。実際、捜査当局の司法取引合意においても弁護士のアドバイスをもらって行っており、十分に体制を整えてから実行に移していたことがわかります。

 司法取引は6月に施行されたわけですが、日産の問題がターニングポイントになって、今後は自身の刑事罰を減免してもらうことで、会社やトップの巨悪を告発、情報提供していく動きが出てくることになるでしょう。