司法取引によって立件されれば、
企業のダメージは計り知れない

――今後、司法取引が増加していく可能性があるなかで、企業はどのような対策を取るべきでしょうか。

 そもそも司法取引に応じられたら困るような違法行為、不適切行為をすること自体が問題です。今、日本企業の多くが関心を持っているのは、内部告発です。最近起きている企業不祥事の大半が内部告発で発覚しています。つまり、内部告発をされたら困るような経営をしてはいけないのです。

 これまでは、内部告発を受けた後に取締当局が事件を立件し、摘発していく際に、情報不足が悩みの種になっていましたが、今後は司法取引を活用して情報を得られるようになります。そうなれば、不正を行っている企業のダメージはこれまで以上に大きくなるでしょう。経営者は内部統制、危機管理体制に今まで以上に真剣に取り組まなければなりません。 

 私も企業の社外取締役などをしていて感じるのは、社内の「情報流通」の問題です。今回の問題が象徴していますが、普段からざっくばらんにお互いに意思疎通ができていないからこそ、問題が起こるのです。取締役会や監査役会や会計監査人が執行部門の人々、現場の人々と十分な意思疎通をするのは、大変な努力が必要です。

 取締役会などモニタリング部門の人たちは、「執行部門と意思疎通はしていた」と回答すると思いますが、たいていは、質問状が出て、回答が準備され、かしこまって報告をするというものでしょう。それでは形式的な意思疎通にとどまり、本質的な情報は得られません。「パソコン上の業務記録はこうだけど、実際はどう?」「それが、実のところ、こうなんですよ…」といった、具体的な意思疎通がないと、本当の実態がわからないのです。取締役会や監査役などへの報告も「業務部長報告会」といったような堅苦しいネーミングではなく、「懇談会」のようにして、日頃からざっくばらんに情報交換、意見交換ができる場にしていくことが大切でしょう。

「巨額報酬の虚偽記載」は形式犯ではない
懲役10年以下の非常に重い“詐欺罪”

――今回、ゴーン氏の役員報酬を有価証券報告書に過少に記載した件に関して、立件しやすいがゆえの“形式犯”ではないかという報道も相次いでいます。法律的な観点から見て、本当に形式犯と言っていいのでしょうか?

 確かに有価証券報告書の虚偽記載は“形式犯”だという意見がありますが、それはとんでもない話です。