増える東南アジア市場への進出
ここ数年、大企業だけでなく、これまで海外進出に縁がなかった中小企業の海外進出件数が増えている。そして、今後もこの数は増えることが確実視されている。
これまでアジア進出と言えば中国や台湾だったが、近年注目されているのはタイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアなどASEAN諸国だ。進出する企業の業種・業態は、製造業、IT関連、化粧品、飲食、デザイン、各種サービスなど多岐に渡っている。
筆者は、中小企業のASEAN諸国への進出を支援する業務を中心に行っている。本連載の筆者の回は、今後数回、ASEAN諸国への進出の成功条件、現地でのビジネス成功の秘訣を、実際の失敗例や成功例をベースにお伝えする。これまで注目されていた中国とは違う、ASEAN諸国独特の活気や熱気を、ぜひ日本へ持ち帰って、自社の成長の原動力にしていただきたい。そのための経営の“肝”をお届けするつもりだ。
一方で増える海外市場からの撤退
進出が増えていると述べたが、企業のアジア進出は全てが成功している訳ではない。一度は進出を果たした企業が、様々な問題に直面して撤退するというケースも多い。先日も、ある消費財メーカーの経営者から、「数年前に中国に進出したが、販売を現地の代理店に任せ切りにしていたところ、勝手に値下げ販売され、急激な収益悪化、また人件費を含むコストの高騰などの問題が重なり、撤退を決断せざるを得なかった」という話を聞いた。
企業の撤退理由は上記のようなものの他に、人材の確保・育成の困難さ、進出国や地域の突然の制度変更によって撤退を余儀なくされるなどさまざまだ。進出の一方で、撤退の数も増えている。