マイクロソフト、グーグルといった外資系大手IT企業で、開発マネジャーを務めてきた“日本で最も著名なエンジニア”の及川卓也さん。50代になって独立し、現在はプロダクト戦略の立案と実施や技術組織づくりのための人材採用と育成などの支援を行っている。そんな及川さんから見て、現在の日本企業、特に大企業の多くはデジタル化の観点でどのような問題を抱えているのか。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子)
「プロダクトマネジャー」という仕事が
日本にはまだ根付いていない
――これまで外資系大手IT企業などで開発マネジャーなどを務められてきましたが、現在は日本企業の支援を中心に行っていると伺いました。
Photo by Keita Takahashi
現在は、これまでのキャリアを生かして3つに分類される仕事で日本企業のお手伝いをしています。1つ目は、ソフトウェアエンジニアとともに両輪で働く「プロダクトマネジャー」という職種です。プロダクトの全体的な戦略を立案し、実施する仕事ですが、日本ではこれがあまり根付いておらず、それが日本のIT産業がグローバルで競争力を持ちにくい要因ではないかと考えています。
2つ目が「エンジニアリングマネジャー」で、ソフトウェア開発の組織作りのお手伝いをしています。多くの日本企業ではこれまでソフトウェア開発が外注中心だったため、内製化を進める上でソフトウェアエンジニアの採用、育成、評価、組織拡大に悩まれています。またエンジニアの文化を会社全体に広げたいという企業もあり、その支援も行っています。
3つ目として、ソフトウェアやシステムを開発したい、リニューアルしたい企業に対し純粋に技術的な支援を行っています。ソフトウェアやシステム全体の設計図であるアーキテクチャーを考えたり、レビューしたり、技術の選定などを一緒に考えて行っています。
――なぜ「日本企業への支援」にこだわられているのでしょうか?
私は、コンピューターメーカーのDEC、マイクロソフト、グーグルにそれぞれ9年、その後1年半ほど日本のスタートアップ企業のインクリメンツに勤めました。