そもそも日本は、世界の主要都市と比べて「景観条例」の整備が遅れています。古き良き町並みは近代的なコンクリートの建物に取って代わられ、中には奇抜な建物が平気で建設されてしまうケースもあります。

いっそ練馬駅を「軽井沢ゲート
ウェイ駅」にしたらどうか

 その問題ですら遅れているのに、もっと手付かずでいるのが地名の保存問題です。私が住んでいる東京の新宿周辺の住宅地には、もともとは角筈、淀橋、柏木といった歴史ある地名が使われていました。それが昭和の時代に町名の大改名運動が起きて、西新宿や北新宿など、行政にとって管理しやすい地名に変更されてしまいました。

 東京メトロや都営地下鉄もそれにならって駅名を付けるわけですが、西新宿駅は本来は柏木駅、西新宿五丁目駅は本来は角筈駅と命名すべき場所でした。もしそうなっていればこのエリアも、下町の千駄木駅、入谷駅のように「ああ、あのあたりか」とわかる場所になっていたはずです。

 不動産価値向上のために駅名改名が許されるのであれば、いっそのこと関越自動車道路の入り口に近い練馬駅を、「軽井沢ゲートウェイ駅」に改名してみてはどうでしょう。そうすればみな、この問題が重要だということに気づくよい反面教師になるのではないでしょうか。

 名前というのはとても大切なものです。自分の名前、一族の名前、そして地域の名前というものは、社会において最も重要な意味を持つものの1つ。それを経済的な理由から決定してもいいのだろうか――。

 そんなことを深く考えさせられる出来事が、今回のJR東日本の新駅名決定だったのだと思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)