米国は欧州諸国や日本などのように官僚機構が整備されておらず、政府の各部門が秘密厳守で行動することもある。

 今回の孟晩舟CFOの拘束問題も、偶然に最悪のタイミングで起きた公算が大、と考えられる。

米国の要請で拘束
法的正当性は疑問

 カナダ紙によれば、同国警察当局は12月5日「米国の要請により、バンクーバー空港で孟晩舟CFOをイラン制裁法に違反した容疑で拘束した」と発表した。

 だがこれには法的正当性に疑問がある。

 イランは2015年7月、米、英、仏、ロ、中、独の6ヵ国と、核開発の制限と交換に経済制裁を大幅に緩和する「イラン核合意」を結び、2016年1月にイランに対する経済制裁はほぼ停止された。

 トランプ大統領は「オバマ前大統領によるイラン核合意は悪い合意だ」と主張、今年5月8日、イラン核合意からの離脱とイラン制裁再開を発表した。

 だが他の締結国はそれを非難して米国に同調せず、孤立した米国だけによる一方的な行動となっている。日本政府もイラン核合意の維持を支持している。

 犯罪人の引き渡しは、双方の国で処罰対象となる犯罪について行われるもので、イランとの取引がカナダの法律で処罰できるようになっているかが問題だ。

 カナダ検察当局は、12月7日バンクーバーの裁判所での審問で、米国の拘束要請に応じた理由として、華為が2009年から14年にかけ、香港の関連会社スカイ・コム社を通じてイランに対し通信機材の輸出を行っていたことを米国から通知されたと述べた。

 2014年以前の輸出なら、イラン核合意の前で、国連の制裁決議は有効だが、この決議は核やミサイル、一部の兵器の禁輸を決めていて、スマホ等の通信器材は規制対象ではなかった。

 孟晩舟CFO個人の犯罪とする米国側の根拠は、この取引に関する米当局の照会に対し「スカイ・コム社は華為とは無関係」と、虚偽の主張をしたことが詐欺罪に当たる、というものだ。

 これが「詐欺」にあたるか否かは、日本の法的感覚では疑わしい。