産業革新投資機構の田中正明社長産業革新投資機構の発足時の会見に臨む田中正明社長 Photo by Masaki Nakamura

 政府系ファンドである産業革新投資機構(JIC)が経済産業省と対立し、田中正明社長以下、民間出身の取締役9人が辞任する異例の事態になった。

 どうも、経産省側が事前に提示していた、1億円以上の高額報酬案を撤回したことに、田中社長らが反発したのが、事の発端のようだ。

 だが底流には、「官」がどの程度まで関与すべきなのか、政府が新産業や成長企業を育成するといったことができるのか、という官民ファンドの根源的な問題がある。

「官」と「民」で埋めがたい違い
調整不足が本質ではない

 産業革新投資機構は、政府が95%を出資し、最大2兆円を運用する能力がある。新産業の育成などを目指し今年9月に発足したが、報酬問題だけでなく、政府の関与について田中社長が反発していたのも背景にある。

 結局、経産省と機構の折り合いはつかないまま、「空中分解」の様相だ。