強者は「不安」「混乱」を利用する
その交渉手法を批判する人々もいる。
私も、決して肯定するわけではない。
しかし、これまでグローバル・ビジネスの最もシビアな交渉の現場に立ち会ってきた私に言わせれば、これはトランプ氏特有の手法ではない。強者とはそういう存在だと思っておいたほうがいい。彼らの中には、パワーで威圧することで、相手を支配下に置こうとする者がいる。そして、自らの要求を達成しようとするのだ。
彼らが狙いを定めているのは、こちらの心理である。
威圧することによって、「不安」「混乱」を生み出す。その心理に乗じて「不合理な判断」=「本来なら必要のない譲歩」を引き出そうとするのだ。この策略に乗せられてはならない。どんな威圧を受けても、それに反射的な反応をしてはならない。どこまでも冷静な判断力を失ってはならないのだ。
そのために必要なのは、精神力ではない。この交渉が決裂しても、「自分の目的」を達成する選択肢をもっておくことなのだ。強者と交渉に向かうときには、絶対に忘れてはならない鉄則と言ってもいいだろう。