大阪出身の田中春男さん(仮名)もユーザーのひとり。上海在住は20年近く、百戦錬磨の田中さんはもはや大抵のことには動じない。だが、フーマーのサービスは「驚異だ」と唸る。

「フーマーな、ビール1本から頼めるんやで。30分以内に無料でな。しかも24時間OKで、夜中ですら持ってくるんや」

 この驚異のサービスによって、消えてなくなるものがいくつかある。例えば“アーイー(お手伝いさん)”がそれだ。上海でも一定の収入がある家庭ではたいてい自宅でお手伝いさんを雇用し、買い物や炊事を切り盛りしてもらうのだが、このサービスの出現で、彼女たちは早晩「お役御免」となるかもしれない。

 消されるのはお手伝いさんだけではない。食品流通に詳しい田中さんは、フーマーのサービスをこう分析する。

「24時間、30分以内に無料なんていうサービス、絶対に赤字のはずや。これが意味するのは、お客をすべて囲い込んで、ほかを倒すことにある。どう考えたって、それしかないやろ」

標的はフランス資本の
スーパー「カルフール」か

 2018年末時点で、上海でフーマーは十数店舗にまで増えた。その1つである「星空広場店」は、虹橋路と水城南路の交差点に開店した。

古北新区のカルフール商圏に堂々と開業するフーマー Photo by Konatsu Himeda

 虹橋路を挟んだ南側には、各国から集まった外国人が多く生活する「古北新区」と呼ばれるエリアがある。約1.3平方キロの面積に3万人超が暮らすが、その胃袋を満たしていたのが、フランス資本のカルフール古北店だった。同店は各種の輸入食材はもちろんのこと、巨大な売り場に各種商材を取りそろえ、「世界一の売り上げをたたき出す店舗」と言われた。

 古北新区はいわばカルフールの牙城だったのだが、そこに突如として食い込んできたのがフーマーだった。田中さんが言うように「無料30分デリバリー」という画期的サービスを携え、顧客を総なめにする算段なのかもしれない。