「ふるさと納税」の季節がやってきた。もちろん、ふるさと納税は一年中いつでもできるのだが、これは1月から12月までの寄付金額から所得税、住民税が還付・控除される制度なので、10月から12月に駆け込み需要的に集中するわけだ。ふるさと納税の実に半分程度がこの3ヵ月に集中するという。夏休みの終盤に慌てて宿題を片付ける子どもみたいなもので、人の習性は大人になっても変わらない。というわけで、この時期になるとテレビでも、ふるさと納税関連のCMが一気に増える。
ふるさと納税の「市場」は年々拡大していて、現在は約3500億円の規模まで膨れ上がった。ふるさと納税ポータルサイトの最大手「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンク代表取締役の須永珠代氏によれば、「この市場はあと数年で5000億円規模まで伸びる。やり方次第では、それ以上に伸びる可能性もある」という。国内ゲーム市場、アイスクリーム、メルカリに代表されるフリマアプリ市場が約5000億円。太陽光発電システムが約3800億円。日本の音楽市場が2893億円。オンラインゲーム市場やソーシャルメディア市場が約2000億円。これらを見ると、ふるさと納税市場がいかに大きく成長したか、今後もさらに大きくなるかがイメージできる。
返礼品で拡大してきた
市場が抱える課題
ふるさと納税市場がここまで成長したのは、言うまでもなく、返礼品によるものだ。返礼品目当てにふるさと納税をする人も多い。僕の周辺でも「自宅のダイソンもルンバも、全部ふるさと納税でもらった」とか、「毎年、ブランド牛を大量にもらうので、仲間を集めてバーベキューをやる」という高額所得者も多い。ちなみに、ふるさと納税ポータルサイト関係者によれば、返礼品の人気トップ3は、牛肉、米、野菜だそうだ。
返礼品人気で盛り上がったふるさと納税市場だから、当然のように返礼品競争も起こる。ダイソン(大阪府熊取町)やiPad(福岡県行橋市)など、ふるさとの名産品、特産物とはまったくなんの関係もない海外製品が返礼品になり、さらには返礼品率の還元率も高騰。80%、90%はザラで、なかには和歌山県和歌山市の「みかん」(還元率119%)や新潟県村上市の「すき焼き用肩ロース」(還元率136%!)のように、還元率100%を超える返礼品も登場している。還元率が100%を超えてしまっても、実際には商品には上代と下代の差額があるので、自治体は実際には損をしていないのかもしれないが、やはり異常だ。