上司が先に結論を言った瞬間、会議が“答え合わせ”になってしまう――そんな経験はありませんか。偉い人の意見が空気を支配すると、実りある会議にならないのはなぜでしょうか?
楽天グループ代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏をはじめ、Google元会長やZoomの創設者も絶賛する世界的ベストセラー『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』をもとに解説します。

ダメなリーダーほど「先に話す」。リーダーが黙ると何が起きる?Photo: Adobe Stock

序列を外せば議論が深まる

上司が自分の意見をはっきりと述べた後で、「君たちはどう思う?」と尋ねるような会議に出席したことがあるだろうか。

いったん上司が発言すると、反対の意見を主張したり、反証を示したりするのが難しくなる

これは、「HIPPO(Highest-Paid Person's Opinion:高給取りの意見)」に支配される状況だ。

しかし、他の人たちの情報や意見も、それ以上ではなくとも、同じくらい有益な可能性が十分ある。

上司の言動に倣うのは部下にとって生き残り戦術かもしれないが、不確実な世界では、それが命取りとなる。

プロセス設計が適切であれば、経験の浅い人たちでも大きな付加価値をもたらせることを、ベンチャーキャピタリストはよく理解している。能力主義が鍵なのだ。

投資チームのジュニアメンバーは、多くの場合、顧客との対話やリファレンスコールの実施、市場分析、投資メモの作成など、分析作業の大半を担っている。

そして、不確実な環境では特に、書面にまとめるのが難しい「ソフトな」情報をたくさん保有している

「若手ファースト」のルールは、シニアパートナーの誰かが発言する前に、若手が自分の意見を述べることを奨励するものだ。

このルールを厳格に実施すれば、まず若手から発言することが期待される文化が生まれる。

下位者と上位者の活発な対話は、多くの場面で極めて重要になる。

ある研究では、看護師の10人中9人が、患者の安全が危険にさらされていると気づいても、医師に率直に意見するのが難しいと感じると打ち明けた。これはもっと広く知られるべき研究結果だろう。

畏縮による沈黙よりも、反対意見を大事にすべきだ。

ジョン・F・ケネディ大統領は、キューバ危機の運命の日々のさなか、この原則をさらに一歩進めた

ケネディは自身の閣僚チームの審議において、序列も議長も設けず、全員が対等に発言するよう求めた。

それだけではない。自分の存在が参加者を畏縮させないように、いくつかの会議をあえて欠席したのだ。

ソビエトの脅威に関する大統領執務室での白熱したやりとりの記録を読むと、核のアルマゲドン(世界最終戦争)を回避できたのは、オープンな議論を促すためにケネディ政権がとった一見ささいにも思えるこれらの意図的な行動のおかげだったのではないかと思わずにはいられない。

自らの権力を制限することがより良い意思決定につながるかもしれない。

これは、どのリーダーにとっても力強い教訓だ。

(本記事は『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』から一部を抜粋・編集しています)