>>(上)より続く

 一方、不倫常習者のBさん(38歳男性)はココアを火にかけないスタイルの不倫である。どういうことかというと、「独身を装う」のがBさんのやり口であり、これによってか今まで修羅場を迎えたことは一度もない。

 ココアが沸騰して噴きこぼれるリスクを初めからなくしてしまえばいい、というアプローチである。

「不倫相手を同時並行することはせず、必ず1人。こちらは結婚していない体(てい)なので、“お付き合いする”という形。仲が深まって向こうが結婚を匂わせてくると、『自分はその気はない』と伝える。

 最初にした不倫が、幹事から『独身ってことで通してほしい』と連れていかれた合コンで知り合った相手とで、以来女性と知り合う際はなんとなく『独身』と名乗るようになった。

 今はただの習慣になっているけど、よくよく考えると『これって不倫に向いているな』という気がする。結婚していることを知らせると相手の独占欲や嫉妬心を刺激してしまうので、修羅場になる可能性が高まるのかなと」(Bさん)

 身分を偽ることで相手を欺いて交際するのだから恐ろしい不実であるが、そもそも恒常的に不倫を繰り返すくらい道徳のネジが飛んでいるBさんには可能な芸当なのであろう。

 いや、あるいは独身の身分詐称が不必要な波風を立てまいとする意図から発しているのだとすれば相手に対する優しさとも取れるが、それは考え過ぎか。“不倫”では相手も心乱されること甚だしかろうが、“お付き合い”であればなんら問題はないからである。

 とはいえ、ともあれBさんは結果的に独身を自称するようになっただけで、そこまで深くは考えていなさそうである。