筆者は習近平の脳裏には3つの懸念が交錯してきたと考えている。本連載でも随時扱ってきたが、ここで端的に総括してみたい。

(1)景気の下振れと市場心理の悪化が懸念される経済への懸念(経済的懸念)

(2)米国との関係悪化が習近平の権力基盤を侵食することへの懸念(政治的懸念)

(3)米中国交正常化40周年を円満に迎えられず、祝えないことへの懸念(外交的懸念)

 この3つの懸念から、ここに来て中国共産党指導部として一定の妥協もやむを得ないという立場で、米国側に歩み寄る意思決定をしたというのが筆者の現段階における分析である。

 前向きな雰囲気の中で米中首脳の接触が進んでいるまさにそのとき、またしても不安要素が米中関係を襲うことになる。華為技術(ファーウェイ)の創設者・任正非氏の実娘・孟晩舟副会長兼CFOがカナダのバンクーバーの空港で拘束された事件である。

 12月8日、楽玉成・外交部副部長(次官級)がカナダ駐中大使を外交部に呼び出し厳重抗議。「米国の要求に応じるという理由で中国国民を拘留し、中国国民の合法的、正当な権益を侵犯した」カナダ当局のやり方を「極めて悪劣」なものとし、「直ちに釈放することを強烈に促す。さもなければそれが必然的に招く深刻な代償、すべての責任をカナダ側が払うことになるだろう」と半ば脅迫に近い表現で圧力をかけた。

2人のカナダ人の拘束は
中国側の報復措置か

 12月10日、元カナダ外交官を含む2人のカナダ人が中国の国家安全に危害を与えたとしてそれぞれ北京市と遼寧省丹東市の国家安全局によって「法に基づいて強制措置が取られた」(陸慷・中国外交部報道局長、12月13日)。

 孟氏拘束に対する報復措置とも取れるタイミングであった。

 その後、バンクーバーの裁判所は孟氏の保釈を条件付きで認める決定を下したが、中国で国家安全局によって拘束されている2人のカナダ人の動向を含め、まだまだ予断を許さない状況が続くであろう。

 12月14日には中国の盧沙野・駐カナダ大使が現地紙に寄稿し、「今回の事件は単純な司法案件ではなく、たくらみのある政治的行動である。米国が国家権力を動員し、一中国ハイテク企業を政治的に抹殺しようとした」と指摘。