つまり、「魅力」を構成する大きな要素の1つは、「安心」だと。
これも、頭で考えればあたりまえのことなのですが、妙に腑に落ちた覚えがあります。入社したときはそうでもなかったのに最近かわいいと思い始めたのは、時間軸の中で、おそらく「見慣れた」のです。
多くの女性を合成した女性の顔も、おそらく「顔の位相」という空間軸の中で、もっともよく見る場所に顔のパーツが配置された、見慣れたものだったのです。なじみの蕎麦屋も、食べ慣れた店ですから、安心できます。
人の本能の大きな構成要素が、「死に対する恐怖」です。サバンナで肉食獣に捕食されていた時代に、確実に本能に訴えかけるこの恐怖から自由になることは、決してありません。ですから、「安心」は何よりの魅力です。
毎日食べている店の蕎麦屋は、いままで食って来て死ななかったものです。そして、時の流れの中で見慣れた「顔」は、自分に危害を及ぼさないことがわかっているわけですし、かつ、平均値に近い顔は、いま現在繁栄していて、自分の血を絶やすという血脈の死の恐怖からもっとも遠いところにある「顔」なのです。
この人間の「本能」から、目を背けてはいけません。
「見慣れたもの」というのは、一定の需要がありますし、「安心」というのは、人々のニーズを構成する大きな要素であることは間違いありません。
しかし、ここで、もう一つ大切なことを述べなければなりません。
人間は、その真逆の欲求も持っているのです。