帰国後すぐに退社を申し出、そのストーリーを具現化するビール造りに着手した。コンセプトの「挑戦」をイメージできるベンチャー企業などの販売先を決め、酒販免許を取得。委託製造先の醸造所を選び、18年7月にクラウドファンディングを実施したところ、2時間半で100万円が集まった。

 山口氏のストーリーに共感した人が商品完成前に購入を約束し、30人を超える支援の輪も広がった。イメージ動画や音楽、デザイン、通販サイトはそうした支援者らが制作する。山口氏が目指すのは「プロダクトではなく、ストーリーを売る」ということだ。

 若者のビール離れが顕著な近年、その若者を中心に人気が高まっているのがクラフトビールだ。小規模な醸造所が造る多種多様で個性的なビールを指し、30歳の山口氏のような新たなビールの造り手が急増している。

日本酒にクラフトジンの発想を持ち込む

稲川琢磨・WAKAZE代表。日本酒造りのハードルの高さを、いまだに感じるのだとか
稲川琢磨・WAKAZE代表。日本酒造りのハードルの高さを、いまだに感じるのだとか Photo by Mio Gouda

 グリーンの地色に、草木を思わせる瀟洒なデザインのボトル。これは、日本酒ベンチャー、WAKAZEのボタニカル酒「FONIA」だ。ハーブやスパイスなどのボタニカル(植物)原料を発酵中にブレンドしている。後述するように、新規参入が難しい日本酒業界において、この酒が突破口となった。

「日本酒を“世界酒”にする」と豪語するWAKAZEの稲川琢磨代表は、元は米ボストンコンサルティングのコンサルタントという異色の経歴を持つ。

 酒造りをしたいと考えたのは、社会人になり、初めて日本酒「真澄」の「あらばしり」を飲んだのがきっかけだった。学生時代にフランス・パリに留学していたころ、海外の人が日本の伝統やブランドをよく知らないことが悔しく、日本のものを海外に広めたいという思いをずっと抱いていた。そんなときに真澄を飲んで、そのフルーティーな味わいに衝撃を受けた。「世界に通じるのは日本酒だ」と確信した。

 そこで知り合いのつてで若い杜氏を紹介してもらい、2015年には杜氏の実家の酒蔵で、友人と「チームWAKAZE」として週末起業で酒造りを始めた。翌年には会社を辞め、一人で起業した。

 しかし、ここで初めて日本酒造りのハードルの高さを思い知る。