会社法の特別背任罪は、会社の役員らが任務に背き、自己もしくは第三者の利益を図る目的で会社に損害を与えた場合に成立する。

 法定刑は重く、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられる。

 特別背任罪の時効は7年だが、海外にいる間は時効は中断する。海外に滞在することが多いゴーン氏については、時効は完成していないと検察側は判断したとみられる。

 付け替えに伴う日産側の実損の有無も問題になるが、記者会見で質問を受けた東京地検の久木元伸次席検事は「負担をすべき義務を負わせたことが財産上の損害に当たると考えている」との見解を明らかにした。

ゴーン氏側は全面否認
「日産に損害与えていない」

 これに対してゴーン氏側は、逮捕容疑を全面否認している。

 弁護人によると、ゴーン氏は日産がドルではなく円で報酬を支払ったため、固定レートで報酬をドルに替えるため、金融派生商品投資で運用する契約を結んだ。

 損失付け替えについて、ゴーン氏は「一時的に日産の信用を担保として借りただけ。その間に発生した数千万円の損失は自ら負担して日産には損害を与えていない。監視委の指摘があったから、契約を戻したわけでもない」などと説明しているという。

 また、信用保証で協力を得た知人については、サウジアラビアのビジネス界の重要人物で長年の友人だとしている。

「日産のために同国の王族や政府へのロビー活動を行い、現地の販売店と日産との間で起きたトラブルの解決にも関わった。支出されたカネは、こうした業務への対価だった」と説明。

「仕事で貢献をしてもらったことへの正当な対価だ。信用保証の謝礼ではない」と主張し、特別背任容疑を否認している模様だ。

 ゴーン氏側は役員報酬の有価証券報告書への虚偽記載(金融商品取引法違反)でも、容疑を否認している。

 法廷では検察との全面対決が予想されるが、特捜部はさらにインパクトの強い、ゴーン氏による「会社の私物化」の摘発にまで踏み込んだ。

 その背景には、「フランス政府・ルノー」vs.「検察・日産」の図式が抜き差しならぬところまで進んでしまったという事情がある。