仏政府の意向を受けた
「統合」に危機感抱いた日産

 19年前、経営破綻の危機に瀕した日産は、ルノーから出資をあおぎ、最高執行責任者(COO)として送り込まれたゴーン氏の辣腕経営で再生した。ゴーン氏はカリスマ経営者として日産社内で「神格化」された。

 日産は業績を伸ばし、いまでは、ルノーと立場は逆転し、企業規模では日産がルノーを大きく上回る。ルノーは日産からの配当が収益の半分に達しているとされる。

 しかし、資本関係ではルノーは日産に対して絶対的に優勢なままだ。ルノーは43%の日産株を握る一方で、日産が持つルノー株は15%で議決権もない。

 日産側は独立性を保ち、不平等な資本関係を見直したい考えだが、ルノーの筆頭株主のフランス政府・マクロン政権は日産をルノーの完全支配下に置き、自国産業へ貢献させたい思惑があるとされる。

 ルノーは、もとは日本の旧国鉄のようなフランスの国策会社で、民営化されたあとも、仏政府が筆頭株主で15%の株を持つ。日産は、第4次産業革命ともいわれる電気自動車や自動運転技術などで先行。

 高い失業率と3割を切る低支持率にあえぐマクロン政権にとって、ゴーン氏は、日産とルノーを結びつける「接着剤」だった。

 ゴーン氏は、仏政権の意を受けて日産とルノーの経営統合に向けて動き出していたともいわれ、このことに日産内部で危機感が強まっていたとの見方もある。

当初は国内捜査で完結する
有報虚偽記載の立件を優先

 日産社内で、ゴーン氏がからむ不正疑惑の事実が判明した経緯は明らかではないが、18年春、日産幹部がゴーン氏の不正についてひそかに検察当局に接触したのが、捜査の端緒になった。

 容疑を裏付ける供述をする代わりに、罪を減免する司法取引が日本でも18年6月から施行されることになり、その「摘発候補」を物色していた特捜部には、渡りに船だった。

 日産幹部は、検察OB弁護士の助言を受け、ゴーン氏の側近で、経費の不正支出などの疑惑に詳しい外国人専務執行役員をまず協力者にした。

 さらにゴーン氏の個人的な経理などに関わる日本人の秘書室幹部を説得。2人は、特捜部との司法取引に応じ、特捜部にゴーン氏が日産の投資資金を私的に流用したり、経費を不正支出したり、役員報酬の過少申告をしていたりした疑惑に関わる関係資料をごっそり特捜部に提出。

 ゴーン氏の指示で行ったとされる「不正」の事実関係を詳細に供述したという。