今年3月のダイヤ改正で北海道新幹線の東京~新函館北斗間が4分間短縮されることが大ニュースとなっている。鉄道の所要時間が4時間を切ると、飛行機とのシェアが逆転するという「4時間の壁」説があるからだ。しかし、つぶさに検証してみると、シェアを左右するのは単純に所要時間だけではない。現状の分析を基に、北海道新幹線の未来を考えてみよう。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

たった4分の短縮が大ニュースに
新幹線「4時間の壁」とは?

スピードアップでシェア増を目論む北海道新幹線「4時間の壁」がそのまま通用するほど、新幹線vs航空機の戦いは単純な構造ではない。しかし、北海道新幹線には今年夏にお目見え予定の“新兵器”がある Photo:PIXTA

 今年3月のダイヤ改正で、北海道新幹線の青函トンネル内の運転速度が140km/hから160km/hに引き上げられる。これにより、東京駅から新函館北斗駅の所要時間は従来の最速4時間2分から4分短縮されて、3時間58分になる。

 なぜわずかな時間短縮が大きなニュースになるかというと、鉄道の移動時間が4時間を切ると、飛行機とのシェアが逆転する「4時間の壁」が存在すると言われるからだ。これにより新幹線と航空機の競争がさらに激化するだろう、と新聞やテレビで報じられている。

「4時間の壁」という言葉は10年以上前から使われてきたようだが、誰が言い出したものなのかは定かではない。ただ経済誌がこぞって取り上げ、一般に知られるようになったのは、2011年3月の九州新幹線の熊本~博多間開業を控え、鹿児島中央~新大阪を約3時間45分で走破する「みずほ」の設定が発表されたころではなかっただろうか。

 所要時間3時間台の最速達種別を設定することで、それまで京阪神~鹿児島間で10%程度だった鉄道シェアを、どこまで伸ばせるかが注目された。そして2016年3月の北海道新幹線開業時には、貨物列車と共用する青函トンネルの走行に速度制限がかかるため東京~新函館北斗は4時間を切れない、つまり競争力を持つことができないのではないかということで再び話題となった。

 なぜ4時間を切ると鉄道が優位に立つのか、その根拠は東海道・山陽新幹線で航空機とのシェアが拮抗する駅が広島で、東京~広島の所要時間が約4時間であるからだという。しかし、この関係はそう単純なものではない。

 東京~広島間の鉄道シェアは、JR発足から1990年代半ばまで50~60%を確保していたが、1990年代後半から航空分野の規制緩和が進み、新規参入や運賃の弾力化が認められたことで、2003年度には38%にまで低下してしまう。当時、新幹線の東京~広島間を直通する定期列車は、日中1時間2本の設定だった。そのうち1本は「のぞみ」で所要時間は今と同じ約4時間だったが、もう1本は「ひかり」で約4時間40分を要していた。